欧州を目指すシリアなどの難民に対して、EUの各国は、ドイツのように受け入れに寛容な国から、ハンガリーのように受け入れ拒絶に近い国に至るまで、対応は様々ですが、400万人という難民の数は、欧州と中東近隣国の社会に大きな影響を与え、政治的、社会的な混乱を引き起こします。
難民受け入れに寛容な立場を早くから表明していたドイツには、果てしない人々が目指すことになるでしょう。
人道的には、受け入れが好ましいことは間違いありませんが、これには限度があり、国民の中で十分な暮らしが成り立っていない層からはじまって、移民受け入れに反感を持つ人たちが徐々に増えることは間違いありません。
一方では、ドイツは、EU各国に対して、相応の難民受け入れをも要請しています。難民受け入れに対しては、上に述べたように各国の温度差がありますから、EU内部の軋みが大きくなることでしょう。
EUの中で一人勝ちと言われてきたドイツですが、VW社ディーゼル車の排気ガス測定ソフトの不正が発覚し、ドイツ工業製品に対する疑いの眼差しが、これからのこの国の経済を苦しめることになるのではないでしょうか。
ドイツ他社ののディーゼル車に、同じような不正が発覚した場合には、ダメージは更に大きくなります。
EUの牽引車ドイツが社会的、経済的苦境に陥った場合は、難民問題と併せて、EU全体が困難に直面することになりそうです。
これまで世界の好況を支えてきた中国の設備投資や対外投資もピークアウトしました。
共産党独裁の現政権の政治システムのままでは、経済改革もままなりません。中国経済は、様々な面で行き詰まっています。
当分の間、政治的にも、経済的にも、世界の不安定要因となることでしょう。
ロシアは依然として、経済的には資源輸出国のままで、世界的なコモディティ価格の停滞の影響を強く受けて苦しんでいます。
国民の不満をそらすために、クリミアの奪取、ウクライナ東部の親露派の支援など対外緊張を作り出してきていますが、シリアアサド政権への支援は、シリア反体制派を支援する米、欧に対する強烈な対抗策です。
これは、中東の混乱をより複雑にするもので、シリアの難民増加策でもあります。
当分、中東の安定はなさそうです。
米欧は、ロシアとどのように折り合いをつけるのでしょうか。
米国は、9月の利上げは見送りましたが、年内の利上げを強く示唆しています。
そうなると、米国への米ドル回帰、米株価の上昇が期待されます。
しかし、世界全体はどうでしょうか。
軍事面と同じように、米国は、世界経済全体への配慮を薄めてきているように思います。
大体のことが、このブログで指摘した方向に進んでいますが、VWのソフト偽造と、ロシアのアサド政権への荷担が新しく出てきました。
どちらも、人類にとっては、マイナス要因だと思います。
世界の安定が、目の前で崩れていくのは残念です。
元々不安定だったポスト冷戦の世界秩序が、急速に力を失ってきたように見えます。
人類のシステム疲労なのでしょうか。
地球儀を俯瞰する外交も結構ですが、政治は、現実的な世界の動きに敏感でなくてはなりません。
この混乱の世を、したたかに切り抜ける策を講じてほしいと思います。
政府は、ロシア外交に活路を見い出すのでしょうか。
その意味では、日本の野党には、全く策がないように思いますが、皆様には、何か感じられますでしょうか。