(ボケ)
AIIB(アジアインフラ投資銀行)に、突然、英国が加入することになり、仏、伊、独に次いで西など欧州主要国も加盟することになりました。
米国の反応から見て、どうやら英国は米国との間で事前調整をしていなかったようです。
英国内では、現内閣で力を持っている財務大臣主導で進められ、外務大臣の意見が容れられなかったのではないでしょうか。
昨年9月、スコットランド独立を巡って、スコットランドの国民投票が行われ、僅差でスコットランド独立が否定されたのは記憶に新しいところです。スコットランド国民党(SNP)は引き続きこの運動を続けていきます。
英国、つまり連合王国は、引き続いて解体の危機に瀕しています。
一方では、昨年5月のEU議会選挙で、英代表の中で英国独立党(UKIP)が英国では第一党(英代表74名中24名)になってしまいました。次が野党労働党の20名、与党保守党は19名の3位でした。
つまり、連合王国は、連合解体と、EU離脱の二つ方向のベクトルに引っ張られています。
昔から、欧州大陸とは一線を画す、という民族意識の強い英国でです。
私が駐在していた80年代末頃のことですが、EU(当時はまだEECだった)に向けての会議で、詳しくは覚えていませんが、サッチャー首相は、「決して英国は国境線をなくすことはない」というような演説をしました。
その夜、バンカーのパーティーでは、普段温厚な人たちが興奮していて、このことに話題が集中していました。英国人の欧州大陸に対する強い民族意識を感じました。
そのような意識の中で、英国は、通貨統合には参加しませんでした。ユーロに対して、伝統あるポンドを守り続けました。
ユーロは、ギリシャ問題をはじめ、多くの問題点を抱えて立ち往生気味です。この点では、英国の決断は、現時点では、正しかったように思います。
人、物、金の移動が自由なEU内にあって、英国は、そこそこの魅力のある国で、人の移入が多くなっています。
これは、英国内で英国人の仕事が奪われることになるでしょうから、EU離脱の願望が徐々に大きくなってきているのではないでしょうか。
この5月7日に行われる総選挙を前にした政党支持率は、ブルンバーグによると次の通りです。(4月12日)
労働党 36% 保守党 33% 民主党 7% 独立党 13% グリーン 5% その他 5% 労働党リード 3
労働党が僅かにリードしているようですが、相当複雑な連立が予想されます。要するに政治の不安定期に入るわけです。
キャメロン保守党首は、選挙対策で、EU離脱を問う国民投票を公約にしています。
そして、もう一つのベクトル、スコットランドの独立です。
因みに、スコットランド独立の経済的基盤は北海油田ですが、石油価格の低迷、ロンドンガトウイック空港近くの大油田発見は、スコットランド独立運動にどのように影響するのでしょうか。
スコットランドは、EU離脱反対ですから、選挙後の政府はどのようにしてこの二つのベクトルを処理していくのでしょうか。
選挙後の政治の混迷に向かって、何でもありのもがきの姿が見えてきます。
現政権にとって、プラス材料は、何でも拾いまくる、AIIB参加も、そんなことの一つかなとも感じます。
それにしても、英国は、米国の次は中国と見たのでしょうか。
中国に、アヘン戦争などを持ち出されて、首根っこを押さえられたのでしょうか。自分の本来の原則を曲げて、中国に謙っているようにも見えます。
英国は、これからの国内政治の予想される混迷によって、もはや、かつてのグローバルな知恵者としての働きができなくなるかもしれないとも感じます。