総選挙の投票日が16日に迫ってきました。
各新聞社、TVなどの事前予想では、自民党が過半数を獲得するのではないか、との見通しが強まっています。
今回の総選挙は、前回の総選挙で、過半数を大幅に超える当選者を出した民主党政権の自滅による解散、総選挙です。テーマは、政権担当能力です。
問題は山積みです。個別のテーマ毎には整理しきれません。「郵政改革」や「政権交代」などの単純な選挙ではありません。
経済、安保、外交、原発、復興など待ったなしの問題に直面しています。国民は、これらを総合して、ト−タルでより良い解を出してくれる政権を選ぶことになります。
原発については、自民党が、再生エネルギーの最大限の導入、省エネの最大限の推進を掲げてはいるものの、3年以内に電源構成のベストミックスを決めてエネルギー戦略を確立するとしている以外は、その他の政党は、挙って脱原発、卒原発、反原発などを唱っています。
ただ、自民党以外の政党にもかなりの温度差があります。
共産党のように、「自然エネルギーが増えれば増えるほど電気料金が安くなる」などの根拠のないことを訴える党から、原発を廃止するのは大変なことだと分かってきている政党まで、温度差は相当あります。
福島第一原発の津波による事故発生から、政府による対応の遅れ、誤りなどが重なり、大きな悲劇と混乱をもたらしました。そして、今なお、それが続いています。
国民の関心は、自然災害による事故回避に向かっています。
この問題は、現在行われている様々な検証、検討によって相当程度克服されるのではないかと期待しています。
しかし、原発のリスクは、自然災害だけではありません。
先般、ある後輩と話していて指摘されたのですが、軍事的に考えれば、現在の日本は、54基の核の地雷が埋まっているようなものだということです。
対テロ対策、安全保障の観点からも、重大なリスクです。
そして、福島の原発事故は、点検中の4号機が最も危険だったことを教えてくれました。原子炉に入って運転中の核燃料棒より、原子炉から引き上げられて、冷却用のプールにある燃料棒が、最も危険な状態であることが分かりました。
外部からの衝撃には、上屋だけでしか守られていないのです。
現在、この国は、大飯を除く全ての原発の運転を停止ています。大部分の原発は、外部からの攻撃、自然災害に弱い状態のまま、見通しもなく放置されています。
この危険な状態を解決するためには、核燃料リサイクルをどうするか、最終処分場をどうするかなどの解決がなければ動きがとれません。六ヶ所村には、使用済み核燃料受け入れの多くの余地がないそうです。
リサイクルが上手く行っても、作り出されるプルトニュームをどのように保管するかなどの難題が待ち受けています。
これらの問題が、急速に解決するとも思いません。
政権党の民主党が、2030年など先の脱原発を掲げているのも、自民党が結論を出していないのも、このようなことを考えてのことでしょう。
自然災害に対する安全対策、テロやミサイル攻撃を想定した堅固な防御対策が出来ない限り、新しい原発は無理なことが明白ですが、中途半端に止めている原発は、安全対策を強化して、動かせるものは動かす(燃料を原子炉に入れる)ことを考えるべきです。
原子力の平和利用という呼称の下に、原子力発電を増やし、それによって平和で豊かな国家を構築してきました。
しかし、福島原発事故を経て、このまま継続することは難しくなりました。
一方では、はっきり言えることは、豊かで低廉なエネルギーなくしては、この国の繁栄はありえません。その道に沿って、日本は懸命に努力してきました。
現在この国は、オイルショック直後と同様に、先進国の中のエネルギー最弱国家となっています。
この国の、自然エネルギーの国際競争力には疑問を持っています。自然エネルギーは自然エネルギーで、国際競争力で考えなければなりません。
エネルギーは、節約できるか、足りるか、という問題でだけではなく、その質の競争力の問題が重要です。
その観点から、安全性を確認しながら、原子力は利用するべきだと思います。
総選挙の予想通りであれば、原発問題も含めて、自民党が勝利し、それが民意ということになります。
原子力発電については、よく考えようという結論となりそうです。
いずれにしても、奥の深い、先の長い道のりです。