(雨上がり)
1988年6月のことだったと思いますが、今は外交評論家として活躍されているO氏が、サウジ大使であった頃のことです。、同氏をリヤドの日本大使館に訪問して、ご高説を拝聴する機会がありました。
初対面でしたが、話が弾み、予定の時間をオーバーしそうになりました。
大使は、
「今、大使館の夫人連中がお茶会をやっています。よろしかったら、そこでお茶を頂きながら続きの話をしませんか?」
と、誘ってくれました。
砂漠の中のお茶会、日本文化を改めて感じて感激しました。
その会話の中で、その頃、長く続いていたイラン・イラク戦争に関して、次のような質問をしました。
「長い戦争にしびれを切らして、どちらかが相手の油井破壊の攻撃に出ることはありませんか?そうなったら世界は(石油を巡って)大変なことになります。」
大使は、
「それはあり得ません。国家が自暴自棄になることはありません。」
と答えてくれました。
21年前のことですが、鮮明に覚えています。
北朝鮮のことを考える度に、このO大使の話を思い出します。
これまで、北朝鮮は、いわゆる瀬戸際政策で、危険な橋を渡ってきました。その都度、もしかしたら北朝鮮は暴発するのではないか、と思われる瞬間がありましたが、米国などの外交努力によって回避されてきました。
今度は、どうなのでしょうか。
O大使の云ったように、本当に国家は自暴自棄にはならないのでしょうか。
瀬戸際政策による過去の成功体験が、柔軟な対応策を採る道を閉ざしてしまっているのでしょうか。
脳梗塞を患い、かなりやせ細った映像を見ると、この最高指導者には、過去にすがるしか道がないのかなとも思えます。
相当に、危険な状態です。日本も、かなりの覚悟が必要な危機ですが、政府、議会は全く内向きで、こちらも強気一点張りです。
暴発への備えは、このミサイル時代に、完璧なことはありませんが、出来るだけのことはしているのでしょうか。
生物化学兵器などが打ち込まれることも覚悟しなければなりません。そうなれば、新型インフルエンザどころの話ではなくなります。
今、考えてみれば、日本の太平洋戦争開戦の選択は、、自暴自棄ではなかったのでしょうか。