チリ大統領が、ブッシュ氏警備担当者に激怒し 晩餐会が中止になった、と報道されています。
今日閉幕したAPEC首脳会議で、アジア太平洋諸国の首脳が、チリのサンチャゴに集まっていました。チリ大統領主催による米国大統領晩餐会に関しての出来事です。
この会議の期間、サンチャゴではAPEC首脳会議と米国に反対するデモが行われ、警官隊との衝突などが起きていました。
晩餐会の警備については、予め合意されていたとのことですが、現地の雰囲気から、米側が個別チェックを要求したのでしょう。
双方の言い分は、良く分かります。
私は、チリがアジェンデ政権(共産主義)下の1972年から、ピノチェト軍事政権下の1978年までの間の4年間、太平洋岸の国ブラジルに駐在していました。
ピノチェト時代には、アジェンデ時代の停滞を回復する試みが多く行われましたが、やがて独裁政権の弊害が目立つようになりました。1988年、ピノチェトは国民投票で追われ、退陣しました。
その後、政治は民政に移され、経済の開放も進んだようです。
この様な会議を主催できるほどに、政治的にも、経済的にも、国際社会に溶け込んできたのだと思います。
サンパウロから何回か、仕事や観光でサンチャゴを訪れました。
この国の印象を一口で申し上げると、ラテンアメリカらしくない、と云うことです。
この国の人たちはきちんとしていて、ラテンアメリカ特有のいい加減さ、大雑把さがありません。旅行していても、不愉快なことに遭遇することがありませんでした。
サンパウロからサンチャゴに出張した時のことでした。
飛行機が遅れて、最初の訪問先に、大幅に遅刻しました。
恐縮しながら到着すると、先方の秘書が、
「時間にお見えにならないので、航空会社に問い合わせて、飛行機の遅れを知りました。
サンパウロの貴方の秘書から、貴方の今日の他の訪問先を教えてもらい、貴方が遅れることを連絡しておきましたから、ご安心下さい。」
と言われ、感激したことがあります。
こんなことラテンアメリカはもちろんのこと、他でも考えられません。チリだけであり得ることかもしれません。
地理的には、カルフォルニアの南半球版とも云えます。
果物が豊富です。美味しいワインの産地です。カルフォルニアと同じ果物を作り、季節差を利用して米国に輸出しています。
太平洋の海産物に恵まれています。
その上、ABCと云われる南米美人国の一つで、女性は情熱的です(この点はラテンアメリカ(笑))。なおかつ親日国です。
酒良し、肴良し、サービス良し、日本人ビジネスマンの単身赴任は、チリでは絶対に保たない、と云われています。
国民性が真面目であることは良いことですが、生真面目すぎると欠点になります。
生真面目外交で、近隣諸国と上手く行かないことが多々ありました。
アルゼンチンとは、南端のフエゴ島の領有を廻って、一指触発の時がありました。
ボリビアには、ペルーとの国境地帯の領有を主張され、常に返還を要求されていました。
米国で逮捕されたチリの政治犯の引き渡しを廻って、米国と対立し、大使を召還したことがありました。たびたび米国と、外交上の小競り合いをする国だ、という印象があります。
小さいことに拘って、対米関係という大事なものを損なっていることが、多いように思います。
外交は、融通無碍な所も必要なのかもしれません。
日本も、北方四島の返還が実現しない限り、ロシアとの平和条約が進みそうもありません。
今、ロシアとの友好関係がどれだけ大事か、冷静に考えれば分かることです。
何故か、チリの外交と似ている所があるように思います。
今回、この記事を見て、もっと穏やかな解決方法はいくらでもありそうなのに、ここでキレてしまう所が、いかにもチリらしいな、と思いました。