中国の株式市場が暴落の様相を見せています。
上海総合指数が、昨年7月の2000位の水準から徐々に上昇し、この6月12日には5166の高値をつけた後、政府による信用規制が一部強まったことをきっかけに、急落しています。
その形が、1929年のNYダウの暴落様相に似ているとして騒がれています。日本の1990年からの暴落もこの様に言われている時期がありました。
昨日は、政府が直接間接に市場に資金供給をする旨のアナウンスがあり、上場企業への買いの強制、売却の禁止などのあからさまな手立てを実施しました。一方では、自主的か、政府の指示か分かりませんが、半数くらいの銘柄が取引を停止しました。
それにもかかわらず、株価の急落は止まりませんでした。
本日は、政府による株価維持手段が動き出したのか、反転して下げ一服の形になっています。
この後は、その結果を、投資家が信じるかどうかだと思います。売ろうと思っても売れない半数以上の銘柄に投資した投資家はどう感じるのでしょうか。自社株を目一杯持たされた国営企業などはどうするのでしょうか。
中国人は、そんなに政府に従順なのでしょうか。
日本のバブル崩壊との比較されますが、日本では、株価は、1989年末に最高値をつけた後暴落がはじまりました。1990年に入って遅まきながら強い不動産融資規制がはじまって、じわじわと不動産の暴落がはじまりました。
中国では、まず、不動産投資が行き過ぎて、鬼城(ゴーストタウン)が沢山出現するなど過剰投資の現実があって、政府が不動産の価格維持策を採ったにもかかわらず、目立った効果がありませんでした。
そうのような中で、株式市場に資金を誘導した結果がこの姿になりました。
独裁政権は、オールマイティだと思いがちなのでしょうか。
デリカシイに乏しいこの政権は、不動産市場にしろ、株式市場にしろ、刀を抜いて強権でコントロールしようとしますが、短期的には成功しても、市場の自浄作用を利用できません。政権は、我が身がかわいいからです。だから、経済の構造改革にはなりません。問題を引きずるだけです。
この暴落は、中共政権にとっては、致命傷になりかねないものを含んでいます。
ウキリークスの暴露によると、首相就任前の李克強は、中国のGDP統計は信用できず、電力消費量と、鉄道物資輸送量の増加を見ていれば実態は分かる、と言ったそうです。
この二つのデータはいずれも前年比マイナスになっています。この見方によれば、6%とか7%成長は幻想で、中国は、既にマイナス成長かもしれません。
GDPデータが信用できないとすれば、金融データも信用できません。
中国は、3兆9000億ドル前後の外貨準備を保有るとされています。外貨準備は、普通は、米国債で運用されますが、現在の米国債保有高は、日本と同じように1兆2000億ドル台で、残りの3分の2強は、何によって運用されているかが大きな謎です。
どのようなことが想像されるか考えてみました。
一つは、ある時期から、基軸通貨ドルに対する対抗意識で一部をユーロに振り替えて、リーマンショックで大損したことを記憶していますが、EU諸国の国債に振り替えてあると思います。AIIBにEU諸国がこぞって手を挙げた理由の一つだと思います。
それでも精々数百億ないしは一千億ドル程度ではないかと想像します。それでもEU諸国にとっては有り難い額です。
二番目は、外貨準備を使って世界各国に投資しました。
油田、ガス田の爆買い、港湾への投資などです。ニカラグア運河に香港の企業が名乗りを上げていますが、その背後に中国政府がいるといわれています。これも頓挫していますが、この様な投資資金が、投資ベースで計上されているのではと勘ぐりたくなります。もちろん相手国高官などへの賄賂も含まれているでしょう。
三番目には、外国に高官が持ち出した額が巨大です。一説には1兆ドルとか驚くような数字です。
厳格な外貨管理をしているこの国で、この管理を潜り抜けるか、外貨準備を何らかのの形で私物化するかしないとこの様なことができません。
この様な資金も何らかの前向きな資産の形でブッキングされているのではないかと疑っています。
最後に、この一年ぐらい、株高が進んでいるのに、外貨準備が減少したりしています。
貿易統計から見ると不思議なことです。
私は、中国政府のキャッシュフローがかなりきつくなっていると考えています。
リーマンショックの頃から、過剰な不動産投資が指摘されてきましたが、中国経済を理解している人は、その頃から人民元を外貨に換え、中国を見限り出していたのではないかと思います。
米国は、人民元の更なる切り上げを要求していましたが、実際は、人民元はそれ程強い通貨ではなくなっていたのではないでしょうか。中国政府としては、外貨流出防止、国内のインフレ防止の観点から実勢に合わせるのを好まなかったと思います。
中国政府は、ある時期から、実態に合わない人民元レートで、必死になって外貨流出を押さえていたのではないでしょうか。
世間は、中国が、ドル買いによって人民元高かを防止していると思っているところに、逆に、ドル売り人民元買いをしていたのではないかとゲスしています。
もしそうだとすると、外貨準備に人民元が含まれているのかもしれません(爆)。
一帯一路、シルクロード基金などを打ち上げてスケールの大きい構想を提示していますが、今の中国経済の実態にそぐわないですね。日本だと列島改造論みたいなものでしょうが、風呂敷が大きすぎて、騙される人も多いのではないかと思います。
この株価、どうなっていくのでしょうか。
私には、中国の今の姿がよく見える状態になったと思います。