福島原発事故に対する政官財学各界の危機管理はお粗末で、大変落胆させられましたが、最近、騒ぎになっている牛肉の汚染問題などを見ていて、改めて、初動動作のお粗末さが明らかになってきました。
基本は土壌汚染ですから、牛肉が汚染されているとすればいずれ牛乳、場合によっては豚肉などにも波及するかもしれません。
牛の餌に問題があるとすれば、農作物も同じことです。これまで問題にされた一部の野菜だけではなく、コメその他の穀類にも問題が及んでくるでしょう。
事故直後に、危機管理に基づく骨太の基本方針が出されてていれば、避けられたことが沢山ありました。原子炉建て家の爆発に伴って放出された放射能が大量だったようですから、爆発直後に出さなければならない政府指示がお粗末でした。
危機管理には、大きな痛みを伴うことが多いと思います。普通の人には、頭に浮かんだとしても決断できません。それができるのは、トップだけです。
トップが、自らを投げ打つ覚悟で臨まなくては、大きな犠牲を伴う決断はできません。
私心があったり、自分がどのように評価されるかということに考えが及ぶ人には、それはできません。
自己防衛意識の強い人にはそれができません。
パフォーマンス型の菅首相には、危機管理を遂行する資質が決定的に欠けていました。自分が可愛い人は、危機管理に向いていないのだと思います。
普段は、官僚からのボトムアップに支えられている人にそれを望むのは無理かもしれませんが、基本的な情報がそろっていれば、もっとも常識的な結論を出すことが危機管理でもあります。特別優れている人でなくとも、素直に現実を直視すれば解が出てくるものです。しかし、その実行には沢山の痛みが伴います。
普段、政府を支えている官僚組織は、危機になると組織防衛の感覚が働きます。官僚組織は、大きな危機の処理は苦手なものです。トップが、あるいは政治が決断しなければ、痛みを伴うことなどは全くできません。菅首相と同じように、官僚組織は我が身を可愛いがります。
政府が、自己防衛に走れば、政権全体が官僚組織になってしまいます。痛みが出ることをおそれ、後追いで、小出しの政策をやむを得ず実行している状態です。
残念ながら、このやり方が、被害を最大化してしまいます。
東京電力以下電力業界も組織防衛に走り、学者も自己防衛に走ってしまっては、もう手がつけられません。
救いは、原子力事故の現場が頑張っていることです。この中から、次世代原発に向けた技術、ノウハウが出てくることを期待したいと思います。
このような時期だからこそ、有能とはいわなくても、フツーの人で結構ですから、心の広い、真面目な人に代わってほしいと思います。
もう、トリッキーな総理大臣は結構です。