(イパネマ海岸のシェラトンホテル(右)の裏に広がるファヴェイラ Wikiより)
リオ五輪では、主催者側にとっても、参加側にとっても、また観光客にとっても犯罪対策が大きな問題でした。
貧困線以下の国民が3分の1はいるのではないかと言われていますから、犯罪は日常化といってもよい状況でしょう。犯罪者の多くが住んでいるのがファヴェイラと呼ばれるいわば貧民窟です。
時事通信に
〔ルポ〕五輪の街リオの貧困地域〜見えぬ希望〜というファヴェイラ(ファヴェイラは現在はコムニダージと呼ぶそうですが)に関する記事がありましたが、読んでみると絶望的な感じがします。
これはブラジルが抱える歴史的な問題が絡んでいます。
ブラジルには先住民族としてインディオが住んでいましたが、中米やペルーなどに比べて人口はそう多くはなかったようです。
問題は、サトウキビのプランテーションが盛んになって、労働力としてアフリカから大量の奴隷が連れてこられました。
奴隷解放は米国より遅く、米国の農場経営者の一部は奴隷を伴って移住してきたとも言われています。
ファヴェイラの住民たちは、奴隷解放後に解放された人たちやその子孫が多かったようですが、現在は、アフリカ系やインディオ系およびそれらの混血など様々な貧困層が入っているようです。
時事の記事は、現状をルポし、行政がお手上げ状態であることを表面的に書いていますが、ブラジル政府が昔から取り組みながら、成果を上げられていない問題なのです。
大都市の公共工事、ビル建設などの単純労働などは、ファヴェイラの住人などが使われています。
上中流家庭のお手伝いさんなどもファヴェイラの人たちです。
農場経営などは、これらの階層の人たちを住み込ませたりしています。
今はどうか分かりませんが、デパートでピストルを売っていたような国ですから、凶悪犯罪や麻薬密売などのに担い手もファヴェイラの住人が多い筈です。
識字率の計算は、小学校入学の数で計られていましたが、実際はかなりの文盲が居ます。
文盲とは、文字をが読まない人たちというよりは、文字に拒絶反応をもっている人たちだと感じました。
もちろん経済的に不利益を受けますが、文字の世界の人たちとは別に、自分たちだけの明るい生活をしたいようです。
社会的にしっかりした生活基盤を確立するよりは、単純労働で安い賃金で使われ、場合によっては犯罪によって必要な収入を得て、同じカルチャーの人たちとファヴェイラで一緒に暮らす自由を尊重する人たちなのだと思います。
この人たちは、学校に通わせたり、福祉住宅を建てて住むところを強制したりする行政が嫌いなのです。
奴隷解放後も、それを引きずったブラジル社会は、未だに二重構造に近いものが続いているのが現状ではないでしょうか。
因みに、日系人はファヴェイラには殆ど居ないと思います。
そういう眼で、時事の記事を見ると、浅いなあ、と感じます。
貧困問題といっても、日本とは次元の異なるブラジルの内なる問題で、ブラジルは、この人たちに頼って社会が成立していることも事実です。